プロセスマイニングとBPRはどう違うのか?それぞれの役割を解説

プロセスマイニングとBPRはどう違うのか?それぞれの役割を解説

はじめに:業務の「可視化」と「再設計」は別物である

業務改善を推進する経営者や業務責任者にとって、BPR(Business Process Reengineering:業務プロセス改革)は馴染み深い手法です。しかし「BPRを実施したが期待した効果が得られなかった」という声は少なくありません。その最大の要因は、現状把握が不十分なまま理想論だけで再設計を進めてしまったことにあります。

一方、プロセスマイニングという新しいアプローチが、データドリブンな業務改善の切り札として注目されています。本記事では、プロセスマイニングとBPRの本質的な違いと、両者を効果的に組み合わせる方法を解説します。

関連:プロセスマイニングとは

現状課題:既存の業務可視化が抱える限界

従来の業務可視化は、現場ヒアリングやフローチャート作成に依存しがちです。しかし担当者の記憶や主観に頼るため実態を正確に把握できず、例外処理や業務バリエーションが見落とされます。

実際の業務には想像以上の非効率が潜んでいます。公開データでは、O2C(受注から入金)のリードタイムに10〜40%のばらつきが見られ、P2P(購買から支払)では請求書参照における逸脱が2〜8%発生していることが報告されています。トップダウンのBPRだけでは、現場の実データに根差さず改善が定着しません。

BPRとプロセスマイニングの本質的な違い

BPR:将来像をゼロベースで再設計

BPRは1990年代にマイケル・ハマーらが提唱した手法で、既存プロセスにとらわれず理想的な業務を描き、抜本的に再設計します。トップダウンで飛躍的改善を目指しますが、現場実態との乖離や効果測定の困難さという課題を抱えています。

プロセスマイニング:データから実態を可視化

プロセスマイニングは、ERPやCRMといった業務システムのイベントログ(操作履歴)を分析し、実際の業務プロセスを可視化・分析する技術です。プロセスマイニングの創始者ウィル・ヴァン・デル・アールスト教授は「データサイエンスとプロセスサイエンスの交差点に立つ技術」と定義しています。

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役割の明確な分担

プロセスマイニングとBPRは対立概念ではありません。前者が「現在地の高精度な可視化」、後者が「将来像の再設計」を担当します。

プロセスマイニングは、ボトムアップでデータ起点のアプローチです。イベントログという事実データから業務実態を明らかにし、継続的な改善サイクルを回します。ボトルネック除去やSLA達成が主な目的です。

一方BPRは、トップダウンで理想設計起点のアプローチです。ヒアリングから仮説を立て、一時的な大規模改革により抜本的な業務変革を目指します。

プロセスマイニングにより把握される業務プロセスの実態

O2Cプロセス:出荷準備の待機ボトルネック除去により、受注から出荷までのリードタイムを中央値で10〜25%短縮。顧客満足度向上と売上機会増加を実現します。

P2Pプロセス:請求書の三点照合の自動判定ルール整備で、支払遅延件数を15〜30%圧縮。早期支払割引の獲得や取引先との信頼関係強化につながります。

サプライチェーン:安全在庫設定の見直しで、在庫回転率を5〜15%改善し、欠品率を相対で3〜7%低下。過剰在庫と欠品の同時解消により運転資本を最適化します。

実践的な6ステップ導入プロセス

1. 目的とKPI設計:顧客リードタイム、一次完了率、キャッシュフローなど、意思決定に直結するKPIを明確化

2. データ基盤準備:ERPやWMS等からイベントログを抽出し、データ品質を確認

3. 現状可視化:プロセスディスカバリーでバリアント・リワーク・待機時間を把握し、ボトルネックを特定

4. 改善施策設計:ルール整備、役割分担見直し、RPA化などを企画

5. 再設計と検証:業務手順・権限・システム改修を含む再設計を実施し、A/B比較で効果検証

6. 定着と自動化:アラート、オーケストレーションで運用に組み込み、継続モニタリング

可視化から実行まで

導入成功のポイント

スモールスタート:O2C(受注から入金)またはP2P(購買から支払)の一部工程から着手し、1〜2週間で「使える可視化」を作ることを推奨します。

ディスカバリーワークショップ:「KPI定義」と「ログ抽出可能性診断」を小規模に実施し、具体的な改善ポイントと投資対効果を確認。

継続的サポート:技術支援、トレーニング、ベストプラクティス共有など包括的なサポート体制が重要。

導入プロセスの全体像

よくある質問

Q1:データが散在していても始められますか?
A:まず対象プロセスを一つに絞り、イベントログ抽出の実現性を評価します。O2C(受注から入金)やP2P(購買から支払)は比較的始めやすく、段階的に拡張できます。

Q2:プロセスマイニングとBPR、どちらを先にやるべきですか?
A:先に全件データで現状を可視化し、改善仮説を検証してから再設計へ進むと、スコープの過不足を避けられます。「事実に基づいて将来を設計する」ことで成功率が向上します。

Q3:ROI(投資対効果)はどう測定しますか?
A:①リードタイム短縮による売上機会増、②在庫削減による運転資本圧縮、③例外処理削減による工数削減、④コンプライアンスリスク低減、の4観点から測定します。

まとめ:データ起点の業務改革が競争力を左右する

プロセスマイニングとBPRは、「事実で現状を把握する」と「将来像を再設計する」という役割を分担しつつ連携させることで最大効果を生みます。可視化→施策→再設計→検証→定着のサイクルを回し、KPIで継続管理することが成功の鍵です。データに基づいた客観的な分析こそが、持続的な競争優位性の源泉となります。

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次のアクション:まずは業務の実態を「見える化」しましょう

「業務を改善したいが何から着手すべきか」「BPRで効果が出なかった」――そのような課題を抱える企業にとって、プロセスマイニングは新たな突破口となります。

推奨される最初のステップ:「KPI定義」と「ログ抽出可能性診断」を小規模に実施し、1〜2週間で「使える可視化」を作ることをお勧めします。対象はO2C(受注から入金)またはP2P(購買から支払)の一部工程が適切です。

業務改革の第一歩は「正確な現状把握」から。プロセスマイニングがもたらすデータドリブンな改善の力を、ぜひ体感してください。

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