営業プロセスのファネル分析とプロセスマイニングの融合

なぜ営業プロセスの可視化が求められるのか

営業組織は、リード獲得から契約までのファネルで多くの顧客接点を管理します。しかし、CRM(顧客関係管理)やERP(基幹業務システム)、MA(マーケティングオートメーション)に分散したログから全体像を捉えるのは容易ではありません。

実際に、営業ダッシュボードは転換率やパイプライン金額の可視化に優れますが、実際の手順や順序(バリアント)までは見えないのが現状です。特に、複数のシステムに分散した営業活動の履歴を統合的に分析できないため、商談が停滞している本質的な原因を特定できずにいる企業は少なくありません。

そのため、本稿ではプロセスマイニング による営業分析をファネル分析と組み合わせることで、イベントログから実際の流れを再構成し、ボトルネック特定と継続的なKPI改善を実現する手法を解説します。

関連:プロセスマイニングとは

現状課題:なぜファネル分析だけでは不十分なのか

従来の集計では、同じ「失注」でも経路の違いが見えません。例えば、見積→価格再交渉→法務レビュー→失注という経路と、初回デモ→フォロー欠落→失注という経路では、明らかに対策が異なります。

実績から見える課題

製造業の営業プロセスでは、部門や地域ごとに商談の進み方が異なり、リードタイムや対応スピードにばらつきが生じるケースがあります。特に、見積作成から承認までの工程が長期化し、商談の遅延や機会損失につながることも少なくありません。

金融業においても、チャネルごとに契約までの流れが分岐し、標準化が不十分なまま運用されている場合があります。営業・契約プロセスをデータ起点で可視化し、実態に即して見直すことで、ばらつきの要因を整理し、継続的な改善につなげていくことが期待されます。

既存手法の限界

  • 静的レポートの壁:理想手順との適合性チェックが不足
  • データ統合の複雑さ:部門横断でのデータ連携が手作業に依存
  • 改善サイクルの遅延:ベンチマーク更新が年次で、迅速な対応が困難

これらの課題に対し、従来のBIツールでは集計結果しか見えず、"なぜその結果になったのか"という因果関係の解明が困難でした。

プロセスマイニングの解決価値

プロセスマイニングによる 営業分析は、CRMやERP、メール、コールログなどのイベントログから、実際のプロセスを自動再構成します。その結果、O2C(受注から入金)に跨る営業〜受注後ハンドオーバーも含め、ファネルとプロセスの"二軸"で改善ポイントを絞り込めるのです。

3つの基本アプローチ

発見(Discovery)
まず、現実の流れを可視化し、バリアントや待ち時間のヒートマップで定量化します。これにより、営業担当者ごと、商品ごと、地域ごとの業務プロセスの違いが一目瞭然になります。

適合性チェック
次に、標準手順との乖離を測定し、ガバナンスを強化します。標準から外れた案件を自動検知することで、コンプライアンスリスクを低減できます。

強化(Enhancement)
最後に、AIによるボトルネック推定や次善アクション提示を行います。例えば、「この案件は過去の類似案件と比較して承認が遅延する可能性が高い」といった予測も可能です。

従来のBIは"何が起きたか"の集計に長けますが、プロセスマイニング による営業分析は"なぜそうなったか"を経路の違いとして説明します。さらに、どこを直すとKPIが動くかを示すため、デジタルツインとして試行錯誤できるのです。

プロセス可視化ツールの詳細

改善効果

製造業や金融業の営業・契約プロセスでは、承認や審査の進め方にばらつきがあり、処理の遅れや手戻りが発生しやすいケースがあります。たとえば製造業では、見積承認や在庫引当の工程が長期化し、受注から入金までの流れに影響が及ぶことがあります。

一方、金融業では与信審査や契約手続きに再提出が発生し、顧客対応や運用負荷が増大する場合も見られます。

こうしたプロセスをデータ起点で可視化し、承認や対応の流れを整理・標準化することで、リードタイム短縮や生産性向上、契約転換率の改善につなげていくことができます。

AI分析と改善提案の仕組み

導入・活用の実践ステップ

5つの実装ステップ

1. 対象範囲の定義
まず、リード獲得→商談→見積→契約のどこから始めるかを明確化します。

2. データ接続
次に、CRM/ERP、Web行動、メールなどを統合し(API/ETL)、イベントID、タイムスタンプ、アクティビティ名の標準スキーマを設計します。

3. 発見と適合性チェック
続いて、標準フローを定義し、乖離を計測します。

4. 改善実行
そして、SLA閾値やアサイン規則を見直し、RPAで定型を自動化します。

5. 継続運用
最後に、ベンチマーク、ガバナンス、監査ログを月次で更新し、PDCAサイクルを回します。

成功のポイントとROI

成功要因
データ品質(重複・欠落)対策、SLAとKPIの整合、営業現場の現実に即した標準化、運用のオーナーシップが重要です。また、経営層のコミットメントと現場の巻き込みも成功の鍵となります。

ROI試算
改善余地(例:サイクルタイム10%短縮→受注前倒し×粗利率)、再作業削減、機会損失回復を定量化します。特に、プロセスマイニングによる 営業分析は"1案件あたりの接点回数や遅延の削減"に直結するため、早期に便益が見える領域から着手するのが賢明です。

導入プロセスの全体像

よくあるご質問

Q1. 営業は定型化が難しいのでは?

完全な定型化は不要です。実際に、バリアントを把握し、価値のない分岐(例:承認の往復)を減らすことが目的です。プロセスマイニングで経路の違いを可視化し、標準化が効く箇所だけSLAやガイドを整えれば十分です。

Q2. データ連携は大掛かりですか?

初期は主要テーブル(案件・活動ログ・見積・受注)に絞り、増分連携で開始できます。その後、段階的にオブジェクトセントリック(複数オブジェクト横断)へ拡張すればよいのです。

Q3. 既存のAIツールと併用できますか?

併用可能です。AIの予測リードスコアやセグメンテーションと共存しながら、プロセスの文脈を整えることで、AI活用の効果も高まります。むしろ、プロセスマイニングで業務の実態を把握した上でAIを適用することで、より精度の高い予測が可能になります。

Q4. 小規模な営業組織でも効果はありますか?

効果は組織規模に関わらず得られます。小規模組織では、属人化した業務の標準化や、営業ノウハウの共有に特に有効です。少ない案件数でも、プロセスの改善余地を明確にできます。

まとめ:ファネルとプロセスの融合で営業力を強化

営業ファネルのKPIだけでは、順序・再作業・待ち時間といった"動的なムダ"が見えません。したがって、プロセスマイニング による営業分析を適用すると、発見→適合性チェック→強化のループで、SLA遵守率と契約転換率を同時に高められます。

具体的には、まず対象範囲を限定し、データモデルを整えて小さく回すのが成功の近道です。その上で、継続的な改善サイクルを確立していくことが重要です。

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おわりに:

最初の一歩として、既存ダッシュボードに「見積依頼→発行→承認」の経路差と待ち時間ヒートマップを追加し、停滞商談を抽出しましょう。

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